各種図書(甲16,17,18,4 9,65等)は,各種団体が,必ずしも見解の一致しない分野において, 自らが相当と考える内容を記載したものであって,記載内容と異なる考 え方も存在することを前提としており,その内容を遵守しなければなら ない法令上の基準を定めたものではないことからすれば,上記図書等が 建築基準関係規定の適合性を判断する際の基準になるものではない。
また,モデル化については,建築工学において,多くの方法が提案さ れ,定説が存在するわけではなく,計算式や計算方法を法律で規定する ことは不可能であり,建築に関する業務を独占して行う建築士の工学的 判断に委ねることがふさわしいということから,建築基準関係規定にそ の方法を定めていないのであり,モデル化の適切性については建築確認 審査の対象とはならない。
(イ) そして,建築確認の方法に関しても,前記のとおり,第一義的には, 建築主及び建築士の責任において建築物の安全性が確保されるべきとい う立場に立脚した上で,建築主事は,原則として法定審査期間21日以 内に確認審査をする旨定められていること(法6条4項)からすれば, 建築主事が建築確認申請書及びその添付図書の細部まで審査すべきこと を建築基準法が予定しているとはいえず,建築主事において,設計者が 行うような検算や引用元と引用先の照合など,上記関係図書をすべて確 認する義務を負担するものではないことは明らかである。
イ本件建築主事の注意義務違反(過失) (ア) 梁間方向の耐震壁の評価の誤り及び境界梁の設計がされていないこ と本件耐震壁を1枚又は2枚のいずれで評価するか及び境界梁を設計す るかどうかは,建築基準関係規定に定められておらず,モデル化におけ る設計者の判断に委ねられるものであるから,その点につき建築主事が 審査義務を負うものではない。
(イ) 1階部分がピロティ型式であるにもかかわらず,その階での層崩壊 を防止する設計上の留意がないこと 本件構造設計において,ピロティ型式に関する設計上の留意が一切さ れていないということはない。
また,ピロティ型式に関しては,建築基準関係規定に定めはなく,本 件運用開始文書(甲64),「建築物の構造規定」(甲65)及び「設 計指針」(甲17の1)に記載されているとしても,それらの記載は建 築確認審査における基準とはならないから,建築主事はピロティ型式に 関する設計上の留意の有無を審査する義務を負わない。
(ウ) 1階の柱と梁以外について一次設計での層せん断力係数を1.25 倍していないこと 一次設計で層せん断力係数を1.25倍以上とすることについては, 建築基準関係規定に定めはなく,「設計指針」(甲17の1)に記載さ れているにとどまるのであって,「設計指針」に従うか否かは設計者の 判断に委ねられた事項であるから,上記記載は建築確認審査における基 準とはならず,建築主事は上記の点について審査義務を負わない。
(エ) 耐震壁の設計用せん断力(水平力)の割増係数不足 耐震壁の設計に当たって設計用せん断力に2倍以上の割増係数を乗じ るということは,建築基準関係規定に定めがなく,「Q&A集」(甲1 9)に記載があるとしても,耐震壁の設計用せん断力を割増しするか否 かについては設計者において判断すべき事項である。
上記記載に従わな い設計がされていても建築基準関係規定に適合しないと判断することは できないのであり,建築主事はその点の審査義務を負わない。
(オ) 構造計算書と構造図とで枠柱のHOOP筋の規格が異なること 建築主事は,申請に係る設計が建築基準関係規定に適合したものであ ることを設計者により確認されているかどうかを審査すれば足り,書類 と図面とを照合し,その整合性を審査することまで,その責務として求 められてはいないのであって,上記の点の審査義務を負わない。
(カ) 枠柱の主筋が不足していること 建築主事としては,枠柱の主筋比につき,大臣認定プログラムによる 計算結果で0.8%を下回る旨のワーニングメッセージ等が表出されて いないか,又は設計者が手計算によるチェックが行っているかのいずれ かを審査すれば足り,枠柱の主筋比の検算等を行うべき義務はない。
本件構造計算書においては,本件電算出力部分にワーニングメッセー ジが表出されておらず,また構造設計概要書及び手計算部分には,上記 計算を大臣認定プログラムでは行っていない旨の記載はなく,同プログ ラムでの計算に代わる手計算の結果も記載されていなかったのであるか ら,建築主事が上記各記載により本件構造設計が柱の主筋比に関する法 令の基準を満たしていると判断しても,審査義務を尽くしており,建築 基準法上の義務違反はない。
(キ) 耐震壁の設計につき,せん断力として最大値から2番目の数値を採 用していること 建築主事は,建築基準関係規定に適合した設計をしていることを設計 者が確認しているかどうか,すなわち,手計算部分については,法令上 「確かめること」とされている項目についてのみ,また,設計者が計算 の中で必要な確認等をしていること(計算上「OK」となっているこ と)を構造計算書上で確かめれば足り,本件建築主事としても,この点 の確認は行っている。
また,せん断力の採用値の引用元である本件電算出力部分は,本件建 築確認申請書への添付が不要とされており,建築主事はその部分につい て審査義務を負わないから,原告の主張は失当である。
(ク) 耐震壁の周囲に枠フレームの設計がされていないこと 枠フレームの設計については,建築基準関係規定に定めのない事項で ある。
「設計指針」においても,枠フレームに関する解説部分は,本文 の記述ではなく,「ラーメン架構の分担率」について解説した部分のな お書きで記載されているにすぎず(甲17の1,119頁),「建築物 の構造規定」(甲18)や「審査要領」(甲49)には,枠フレームに 関する記載はない。
以上のとおり,枠フレームの設計は「設計指針」が採用している考え 方の一つにすぎず,そのような設計を行うか否かは設計者の判断に委ね られているものであって,建築主事は枠フレームの設計の有無につき審 査する義務を負わない。
(ケ) 1階柱(1C1の柱)のせん断耐力不足 建築主事は,建築基準関係規定に適合した設計をしていることが設計 者により確認されているかどうかを審査すれば足り,設計者による計算 結果について検算する義務を負うものではない。
また,本件構造計算書において上記の点が記載されている箇所は,本 件電算出力部分であり,法令上,本件建築確認申請書への添付の必要は なく,そもそも建築主事が審査義務を負うべき部分ではないから,原告 の主張は失当である。
(コ) 2階の接合部のせん断耐力不足 「Vju/Qdn」という数値は,建築基準関係規定に定めのない基 準であるから,建築主事はその点につき審査義務を負わない。
商標法
原告は,商標法において,登録商標である本件商標と同一標章を使用することは何ら制限されるものではなく,原告の使用商標の使用は,商標法上正当に認められた範囲での使用であり,適法な使用であると主張する。
甲第36,37号証,乙第1ないし第4号証によれば,仮処分決定は,被告が平成12年4月27日原告を債務者として申し立てた,不正競争防止法2条1項1号,2号及び3条1項に基づく,差止対象表示1を付した商品の製造販売等の差止め等を求める仮処分申立てについて,東京地方裁判所が,平成13年12月7日,上記申立てを認容し,原告に対し,差止対象表示1を付した商品を製造,譲渡し,その包装・広告に上記表示を使用してはならない旨等を命じたものであり,その決定正本は同月14日原告に対し送達されたこと,本案判決は,上記仮処分の本案訴訟として提起された不正競争行為差止等請求事件と,原告が被告に対し提起した不正競争行為差止請求権不存在確認等請求事件とを併合審理した上,平成14年12月27日言い渡された東京地方裁判所の判決であり,原告は差止対象表示2(その(1),(2)及び(4)は差止対象表示1と同じである。)を付した商品を製造,譲渡し,その包装・広告に上記表示を使用してはならない旨等を内容とするものであること,上記判決に対して原被告双方から控訴がされたが,平成16年3月15日,東京高等裁判所においていずれの控訴も棄却する旨の判決が言い渡され,さらに上告及び上告受理申立てがされたが,同年9月21日,上告棄却及び上告審として受理しない旨の決定がされ,原告に対し上記差止めを命ずる本案判決が確定したことが認められる。
そうすると,原告主張の使用事実1(使用商標1の使用)は,仮処分決定がされた後のものであり,また,使用事実2(使用商標2,3の使用)は,本案判決が確定した後にされたものである。
ところで,商標法上の保護は,商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるところ,商標法50条所定の登録商標の不使用取消審判制度の趣旨は,一定期間登録商標の使用をしない場合には,そのような信用が発生しないか,又は消滅してその保護すべき対象がなくなること及び不使用に係る登録商標に対して排他的独占的な権利を与えておく理由はなく,かつ,その存在により商標使用を希望する第三者の商標選択の余地を狭めることから,そのような商標登録を取り消すことにあると解される。このような制度趣旨に照らせば,その取消しを免れるために被請求人が証明しなければならない審判請求登録前3年以内の日本国内における当該商標の使用は,その使用自体が法的保護に値する正当な行為といえるものでなければならないというべきであって,当該使用が,その使用を禁止する仮処分あるいは執行力ある判決に違反してされたものであるときは,そのような違法な状態のもとに信用の蓄積を認めることは許されず,かかる違法な使用は,商標法50条にいう登録商標の使用に当たるということはできないと解するのが相当である。
したがって,原告の使用商標の使用が,仮処分決定及び本案判決によって命じられた不作為義務(使用禁止)に違反する場合には,原告主張の使用事実1及び2は,商標法50条にいう登録商標の使用として商標法上保護されるものではないといわなければならない。
もっとも,仮処分は,判決による権利の確定とその実現を図るまでの間の暫定的な措置であるところ,例えば,仮処分を遵守して商標を使用しないまま3年が経過したとしても,未だ本案の判決により権利が確定していないとすれば,仮処分の被保全権利の存否自体が未確定の状態にあるというべきであるから,その間の不使用を理由に当然に不使用取消しとなると解することは相当でなく,このような場合には,仮処分によって使用が禁止されたために当該商標を使用できないことをもって,商標法50条2項ただし書にいう「使用をしていないことについて正当な理由」がある場合に当たると解する余地がある。
しかし,本件においては,不使用取消審判の請求時,既に本案判決が確定しており,仮処分決定の当初から,原告において差止対象表示1(本案判決に係る差止対象表示2の(1),(2)及び(4))を使用することが許されなかったことが確定している(すなわち,仮処分の被保全権利の存在が確定している。)のであるから,このような場合にまで,上記の「正当な理由」があるということはできないというべきである。
また,上記の数値は,本件建築確認申請書への添付を要しない,本件 電算出力部分にのみ記載されているものであるから,建築主事はその点 につき審査義務を負わない。
2 一審原告ら (1) 本件各特許権は有効であること ア無効事由を有する特許と独占の利益の関係に対し 一審被告は,職務発明対価請求訴訟においても無効主張が可能であるこ とは当然のことであるとして,本件各発明には進歩性がないなどとして無 効であると主張する。
もちろん,特許法旧35条に基づく職務発明対価請求訴訟においても, 発明の内容が具体的にどのようなものであって,どの点に優れた価値があ り,それが独占的利益を生むものであるかどうかという評価は当然必要で あり,事実を見極めることが第一ではある。
しかし,侵害訴訟において無効の主張が認められているのは,特許権者 が不当に技術を独占することがないよう,他業者の利益との衡平を図りな がら産業の発展を図るという特許法の本旨に沿った目的のためであって, 本来,特許権者が職務発明対価請求に際して発明者に対抗するためにある わけではない。
本件においては,例えば第2発明・第5発明にしても,マックス社やセ イコーエプソン社という複数の競業他社から異議申立てを受け,その上で 特許査定されており,そのマックス社は侵害品を製造・販売したものの結 局異議申立てが通らず侵害品の製造・販売を中止したという経緯があり, さらに,これらの日本出願をベースにした海外特許が欧米諸国で有効に特 許登録を受けており,特許番号を警告的に明記して他社を牽制してきたと いう事実がある。
そして何より,一審被告自身が特許権者として第2発明 ・第5発明の主題である,抜群の耐久性を誇るラミネートラベルが誰にで も簡単にその場で作れるという利点を製品の最大の特長として積極的にア ピールすることでラベルライター市場を拡大し,凌駕してきたのである。
このような状況が揃う中で新たに市場参入を考える者がいたとしても,第 2発明や第5発明に関する特許を無効であるとする根拠は一つもないので ある。
この点において,第2発明・第5発明に対して,特許権者である一 審被告が自ら特許無効の主張をすること自体,全く道理に合わず,許され ないことである。
要するに,特許の無効化がおよそ期待し得ないような状況下においては, 特許権者は既に市場において独占の利益を獲得しているのであって,それ は,後日自ら特許の無効を訴えたとしても,既に社会に対して返還不可能 な既得の利益なのである。
しかも,以下のとおり,本件各発明に基づく特許はいずれも有効であっ て,これと同旨の第1発明,第2発明,海外特許2,海外特許3に係る原 判決の判断は正当であるが,これと異なる第3発明,第5発明,海外特許 1に係る原判決の判断は誤りである。
イ無効事由の不存在 第1発明〜第3発明,第5発明,海外特許1〜3には,以下に述べると おり,いずれも無効事由はない。
(ア) 第1発明が有効であること a 一審被告は,原判決が離型促進剤の構成要件について公知でないと した点について,離型促進剤を使用することは慣用技術であるから, 第1発明を有効とした原判決の判断は誤りである旨主張する。
しかし,市販のインレタシートのコーティング剤と第1発明の離型 促進剤は異なるものであり,前者を後者に替えて用いることもできな い。
この点,一審被告の上記主張は,一審原告X 1が自ら離形促進剤が 公知な技術であることを認めていることを前提とするものであるが, このような主張は,市販のインレタシートに樹脂製のシート面に文字 の転写を促進するようなコーティング剤が塗布されていることを,第 1発明における「離型促進剤」と同じレベルのものと混同するもので ある。
市販のインレタシートは,シート基材(?)に充分な量のインク材 でシルク印刷してインレタ文字(?)を形成し,インレタ文字(?) を乾燥させた後に,そのインレタ文字(?)側からコーティング剤(?) を塗布する。
そして,コーティング剤(?)が転写対象となる紙と接 触するとコーティング剤(?)の粘着性により,インレタ文字(?) がシート基材(?)から剥がれるというものである。
しかし,このよ うに,まずテープにインレタ文字を形成しておいて,その後でテープ 印字面にコーティング剤を塗布するような方法は,インレタ製造工場 では許されても,その場ですぐに誰にでもインレタが作れるという第 1発明の本旨に背くから,採用し得ない。
一審原告X 1は,大学時代 に学んだ材料工学の知識と経験を生かしながら,予めシート基材に離 形促進剤が施され,その上にインク材でインレタ文字が印字される仕 組みによって,インレタテープが即座に作れるということを発見した のである。
さらに,市販のインレタシートに用いられるコーティング剤は,イ ンレタ文字と転写対象物との間に介在して両者を粘着させるのに対 し,第1発明の離形促進剤は,シート基材とインク材との間に介在し, インク材をシート基材から剥がれやすくしている点でも異なるのであ る。
もちろん,市販のインレタシートに用いられるコーティング剤を 第1発明の離形促進剤に代えて用いることもできない。
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